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適格退職年金

適格退職年金とは

わが国の年金制度は、3階建ての構造になっています。

1階部分に、全国民共通の基礎年金である国民年金、2階部分に、被用者年金制度である厚生年金と共済年金、3階部分に、企業が独自に行う私的年金である厚生年金基金や適格退職年金という構造です。

適格退職年金は、通称「適年」ともいわれていますが、昭和37年、税制改正によって導入された企業年金で、生保や信託銀行の推進のもとに普及した退職金の外部積立方法の一つです。

適格退職年金は、法人税法に適合した退職金制度で、税法上の優遇措置が与えられるという点に特徴があり、したがって、「税制適格退職年金」ともいわれています。

法人税法に適合するためには、
退職金の支給を目的とすること
②生命保険会社や信託銀行等と契約を締結し、掛金等を支払うこと
③年金数理に基づいて財政運用がなされること
④一旦払い込まれた掛金は事業主に返還されず、制度廃止の場合は社員に支払われること
など、全部で14の条件があり、これらすべてに該当した上で国税庁長官の承認を受けなければなりませんでした。

税法上の優遇措置とは、
①事業主が拠出した掛金は全額損金計上ができる
②掛金は社員の給与所得とみなされず、受給時まで課税が繰り延べられる
のようになっていました。

なお、適格退職年金は、文字通り支給方法が年金(分割払い)であるため、企業が独自に行う私的年金(企業年金)制度として位置づけられています。

企業が拠出する掛金の全額が損金算入できるというメリットもあり、中小企業を中心に普及し、ピーク時の件数は9万件を超えていました。

その後、解約や他制度への移行により、現在では4万件を下回るまでに規模が縮小しています。

適格退職年金の法律的な位置づけ

適格退職年金制度を開始する際には、退職年金規定の提出が求められました。

この退職年金規定は、就業規則の一部であるため、労働基準監督署への届出が必要でした。

したがって、会社には退職年金規定において規定されている金額の支給義務があり、社員にはこれを受給する権利があるということです。

このように、適格退職年金の法律的な位置づけは、法律によって明確に支給義務と受給義務が定められているということです。

適格退職年金の正しい理解

中小企業の場合は、適格退職年金の導入を生保会社が強引に進めたため、いろいろと誤解や問題があるようです。
例えば、生保会社から毎月保険料という名目で徴収されているため、単純に生保の保険に加入しているというような勘違いです。

生保には加入しているが、適年には入っていないというような勘違いもあります。
無理やり加入させられたため、こうした認識になってしまったのではないかと考えます。

さらに、会社によっては、適格退職年金の支給対象となるべき社員と適格退職年金の加入者が異なっているケースがあります。

何度も説明しましたように、適格退職年金の支給要件は退職年金規定によって定められています。
社員はこの退職年金規定の支給対象者から除外されない限り、平等に受給できる権利があります。

このように、適格退職年金就業規則の一部である退職年金規定に定められる制度であり、会社が恣意的に加入者を決定できるものではなく、あくまでも退職年金規定に基づいて加入者及び支給要件が決まります。

保険感覚で考えると、会社自身が就業規則に違反し、場合によっては労基法等の法律に抵触するおそれがあります。

適格退職年金は、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金と同じく企業年金の1つです。

しかし、その性格が異なっており、これらの支給事由がいずれも老齢が中心であるのに対し、適格退職年金の場合は退職です。

適格退職年金は、文字通り退職したときに給付され、まさしく退職金としての機能が備わっています。

適格退職年金は、他の年金制度とは異なり、退職金制度の一部であるといっても過言ではありません。

適格退職年金の年金という言葉は、退職金の分割払いであると考え、適格退職年金を退職金制度という視点で考える必要があります。

結論的に言いますと、適格退職年金の問題を解決するということは、退職金制度をどのように改革していくかということになります。

適格退職年金の廃止

(1)企業年金制度の再編
別項でも述べましたが、適格退職年金制度は平成24年3月末を持って廃止されることになりました。

これに伴い、企業年金は確定給付制度としての厚生年金基金、確定給付企業年金(基金型と規約型)の三つ、確定拠出制度としての確定拠出年金(企業型と個人型)の二つ、計五つに再編されました。

(2)適格退職金制度廃止の理由

積立不足の発生
適格退職年金は、将来の退職金の支払いに備え、一定の掛金を計画的に外部に積み立てる「事前積み立て方式」を採っています。

この場合、一定の運用収益を見込んで積立を行います。
この運用収益は、当初予定利率5.5%という数字を用いて算出されました。
つまり、5.5%で運用できることが前提となって、掛金や退職金額が決まっていました。

しかし、この運用収益と実際に積立金につけられる運用収益は別です。

実際に、生保会社が一般勘定で運用する場合、運用収益は0.75%程度に過ぎません。
この予定運用収益と実際の運用収益との差額が積立不足になっています。

特に、低金利が継続していることもあり、実際の運用収益が低下しています。
したがって、必要な退職年金額を充たすためには、運用収益が低下した分、保険料(掛金)を増やさなければなりません。

この保険料(掛金)は、会社の責任と負担で増やすしかありません。

何故なら、既に述べたように、退職年金規定で定められた退職金額を支給する義務は会社にあるからです。

こうして、保険料(掛金)を増額することで、積立不足は解消されますが、当初の掛金と比べると何倍にも膨れ上がります。

そして、会社が掛金の引き上げに応じることなく、保険料(掛金)の引き上げが放置されたことが積立不足の要因です。

さらに、適格退職年金の仕組みが、5年以内の期間ごとに行われる財政再計算の時しか保険料(掛金)の見直しができないことにも関係していますが、そもそも一番の問題はそのような積立不足が放置され、積立不足の防止・解消を図る決まりが適格退職年金に備わっていなかったという点にあります。

受給権の保護が不十分
前記のように、結果的に制度上の積立不足があっても、そのままの状態で適格退職年金が継続され、将来の退職金の支払いに重大な影響を及ぼす危険性がありました。

また、別項でも述べましたが、適格退職年金の解約は事業主単独でも行えるため、受給者である社員が知らないうちに解約されているような事態もありました。
このように、受給権の保護が不十分だったのです。

企業年金制度整備の必要性
上記のような制度上の欠陥もあり、また、他の年金制度とは所管が異なる適格退職年金制度(適格退職年金は国税庁で、他の制度は厚生労働省)を廃止し、新たに同一の枠組みのもとに企業年金制度を整備する必要があったのです。

(3)中小企業への影響
適格退職年金により退職金の外部積立を行っている会社は、これに代わる資金調達手段を講じなければなりません。

別項で述べたように、退職金引当金制度が廃止されたため、新たな外部積立金制度を模索しなければならなくなりました。

適格退職年金制度が廃止されても、退職金規定は厳然として残っていることについては、既に述べたとおりです。

適格退職年金を解約した場合の返戻金は、社員に直接渡され、一時所得になり、課税されるという点です。

解約返戻金を受け取った社員は、確定申告を行わなければなりませんが、一時所得と退職所得と比べた場合、税法上一時所得の方がきわめて不利な取り扱いを受けます。

こうした形で発生する所得税や住民税の負担は、誰が行うかという問題です。

そもそも適格退職年金を解約しなければ、解約による一時所得は発生しないため、社員にその負担を課すことはできないでしょう。

特に、解約返戻金を退職金の前払いとして処理した場合には、その負担増過分は会社が負担するべきであると考えます。

適格退職年金の問題解決

適格退職年金の問題解決とは、前述したように、退職金制度改革に他なりません。
そして、この場合には次の二つの視点が欠かせません。

(1)人事面
旧来の長期勤続者を優遇する画一的な退職金制度を見直すとともに、人件費の総額管理ができない不透明な賃金上昇からの切り離しを図らなければなりません。

すなわち、単に勤続年数に比例した画一的な退職金制度(定額制退職金制度)や、この先の賃金上昇により支給額が左右される不安定な退職金制度(基本給連動型退職金制度)の見が必要になります。

(2)財務面
適格退職年金の廃止により、退職金の支給水準の適正化が求められています。
既に説明しましたように、適格退職年金の積立不足を解消するためには、保険料(掛金)を増やすしかありません。

これが可能な会社はもちろんそれで構いませんが、売上の低下などにより、これ以上保険料(掛金)を増やすことができない会社が多々あります。

保険料(掛金)を増やさないためには、結局のところは退職金額を引き下げるしかないと思われるのです。

適格退職年金の廃止により、退職金の支給水準の適正化と今後どのような形で退職金の原資を準備していくのかを検討し、それにはどのくらいの資金が必要かを把握する必要があります。

そして、他制度への移行や適格退職年金の積立金の移管を検討しなければなりません。

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